天草の歴史を今に伝える﨑津天主堂を背に細い路地を歩くと、地元の人たちが集まる『南風屋』がある。約220年前に琉球王の使節団から伝授されたものの、一旦は途絶えた”杉ようかん”を味わえる店だ。「地元の有志で復活させましたが、味の再現には苦労しました。昔の味と食感を知る地元の方たちに何度も試食してもらったんです」と、代表の宰川壽之さん。うるち米はせいろで蒸し、石臼と杵で丁寧について餅にする。薄く伸ばして手作りのあんを包み、再度蒸す。今も昔ながらの製法で、手間をかけて一つずつ手作りして仕上げていく。 縁起が良いと引く、鮮やかな紅色にもこだわりあり。添加物の不使用を第一に、探しまわって選んだのは天草産のドラゴンフルーツだ。果汁に少しの酢を加えてある。これに、軟らかなものを選んで摘んだ杉の葉を乗せる。「先人の知恵ですね。杉は保水性と殺菌力を備えているようですよ」という。控えめな甘さのあんを包む餅は、しっとりと軟らかな口当たり。しかし、保存料を使わないため、この食感は1日限定。「﨑津を訪れないと食べられない」ことにもこだわる、伝承の味である。
南風屋(はいや)
〒863-1204 天草市河浦町崎津454
TEL:0969-79-0858
FAX:0969-79-0809